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『PRRR…』
戦争が終わって一息ついてたら、何の前触れもなく携帯が鳴った。
俺は無言で通話ボタンを押す。
何故なら、相手はもう予測出来ているからだ。
例え、見知らぬ番号だったとしても。
『…侑真、戦争お疲れさん』
黙ったままの俺を気遣ってか、やけに低い声だった。
「お前は死んでないみたいだな」
『っつっても、重傷喰らっちまったぜ。しばらくGTにも行けねぇや』
恢斗は苦笑して、いつもの飄々とした口調に戻った。
そして、静寂に包まれる。
奴は何も言おうとしない。無理矢理話を変えようともしない。
俺には理由がわかっていた。『会いたい』と告げられた言葉を、忘れるワケなかった。
だからこれからとるべき行動は。
「恢斗、今予定空いてるか」
『……覚悟、出来たみたいじゃねぇの』
ややあって、奴から笑いの含んだ声が聞こえた。
「…近くの公園で待ってる」
『バーカ、そこに近いのは俺だぜ』
俺は大真面目だってのに、恢斗は軽く笑った。
苛立ちは起こらなかった。何故か俺も薄く微笑を浮かべていた。
電話を切って、外へ足を運んだ。
「よォ、俺が待たされる側になるとはな」
息を切らせてまで走ったのに、目の前に立つ男は手をひらひらさせて笑っていた。
多分、いや絶対余裕が交じっている。
「…久しぶりだな、恢斗」
「ま、直接会うのは久しぶりかもなー」
ケラケラ笑う恢斗。
よく見ると、昔会った時より若干背が高くなった気がする。
「さて、本題でも入りましょーか」
電話で何度か聞いた低い声で、恢斗は言葉を紡いでいく。
「とは言っても、俺等の現状を話すワケじゃねぇ。お前に頼みがあんだよ」
「頼み?」
「お前の居る結社に入りてぇんだよ」
「………はぁ!?」
理解するのに時間が掛かった。俺の声が静かな公園に響き渡る。
てっきり、何をしてきたのか、とか、今の族の現状を話すのかと思っていた。
想定外の事を言われて、冷静になれるわけがない。
「テメ、何言ってやがる!意味わかんねぇよ!」
「あー…やっぱ混乱しちまったか」
「やっぱって何だやっぱって!」
脳内が混乱してても、これだけははっきりと感じられた。
懐かしくて、嬉しくて、安心する。
久々の再会が学園繋がりになるなんざ、どっちも思っちゃいなかっただろう。
「ヘーキだって。俺だって今禁煙中だし、喧嘩はゴーストにしかしてねぇし」
「そういう問題じゃねぇよ!」
そう言って俺は軽く恢斗の頭を殴った。
自然と怒りは感じない。不思議だ。
「……まぁ、どうせ断っても粘るんだろ?」
俺を散々困らせてくれた恢斗だ。
納得行くまで帰らない事くらい目に見えてる。
「お、よくわかってんじゃねぇか。さっすが俺の相棒」
「元、だろうが。一文字抜けてる」
「今こうやって再会出来てんだし、同じようなもんだろ」
俺も恢斗も、端から見れば楽しそうな友人に見られてるかも。
そう思えるぐらい、喜びの笑みが消える事はなかった。
「へぇ、そんなに嬉しかったのか、俺との運命の再会が」
「違う。つーか運命って何だ、気味悪い」
「うわ酷ぇ、俺すっげぇ嬉しいのによ!」
「んな事知るか」
他愛のない会話でさえ、楽しく思えた。
俺達はしばらく談笑した。
恢斗と俺の結社が音楽系だったり、好きな曲を語り合ったり。
思わず口が滑って俺の女装の話もしてしまったが。
「マジで!?…こりゃー見物だぜ。あの侑真がまさかの…ククッ」
「五月蝿い黙れ!」
案の定、笑われた。
俺は顔を真っ赤にしながらもう一度恢斗の頭を殴る。
そんな事している内に、気付けば夜が明けようとしていた。
「そろそろ戻らないとヤバくね?」
「かもな。…で、入団は本当なんだな?」
話が逸れすぎて忘れかけてた事を確認する。
「ああ、近い内に届けを出さなきゃな」
その声に俺は笑って頷いた。
「じゃあな」と互いに手を振り合い、正反対の道を進む。
これからは違う道を歩まなければ。そんな意味を込め合いながら。
-----------------------------------あとがき-----------------------------------
もうどうせなら一気に進めてしまえ!
そう思って執筆したらえらく長くなりました。という事で背後です。
最初は某倉庫の予定だったんですが…今って修学旅行中ですよね?
という理由で場所を公園にしました。適当主義です、ハイ、すみません。
ちなみに最後の一文は『族を降りて普通の人生を歩む』
そんな意味もあります。恢斗くんも同じ事を考えて正反対に進みました。
これで『ある日の出来事』シリーズは完結です。
二~三話で終わらせるつもりが、こんなに長くなるなんて思ってませんでした。
でもやっと恢斗くんをこのブログに入れられる!
次回更新時に、恢斗くんを紹介しますね。
それでは最後に、ここまで読んで下さった方に感謝を。(いや、見てないかもですが)
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