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『PRRR…』
あれから随分経った今、また家の電話が鳴り響く。
久しぶりのコール音。間違いなくアイツに違いない。
あたし…いや、「俺」は受話器を取った。
(久しぶりの長文日常です。続きはテキストリンクよりお願いします。)
「……」
『俺だとわかったから黙ってんのか、侑真サン?』
やっぱり、嫌な予感程当たりやすい、というのは本当らしい。
飄々とした言葉遣い。俺をわざと「サン」付けで呼ぶアイツの遊びゴコロ。
「…俺に何の用だ」
『へぇ、今度は「俺」に変えたのか。似合ってるじゃねぇの』
「んな事どうだっていいだろうが!もう電話すんなって言っただろ!?」
ムシャクシャする。
人を、特に俺をからかう事が無性に好きなのは変わってない。
ムカツク。ムカツク。ムカツク。
折角俺は自分なりに過去とのケジメをつけたってのに。
アイツは。アイツの声は。
思い切り過去の「あたし」に戻そうとしてる気がしてならない。
『あ、言っとくけど族に戻れとかそういうのはやめたから』
「……はぁ?」
予想外の言葉に唖然とする。
「お前な、『期待してる』とか言いながらそりゃねぇだろ?」
『だって侑真サン頑固だし』
「んで、その余所余所しい呼び方やめろ。お前に言われるとキモイ」
笑いを含んだ声で奴は言う。
仮にも昔は俺の相棒だった男。…だからこそ、話したくもなかったのに。
『…ハァ、まぁ、ふざけるのもここまでにしとくぜ侑真』
「最初の話に戻ろうか。何を言いに掛けてきやがった」
急に声のトーンが落ちた。俺も、奴も。
とりあえず、俺を族に戻すのは諦めたみたいだから落ち着くことは出来た。
知りたいのは、奴の考えてる事。
「俺に掛けるって事は、ただの世間話ってワケじゃねぇだろ」
『正直に言うと…俺はお前に会いたいんだ』
「……は?」
『冗談じゃねぇぜ、コレは。感動の再会になるとは思っちゃいねぇけど』
俺はただ、受話器を握ったまま、呆然とするしかなかった。
冗談じゃない事ぐらい声でわかる。アイツの声は低く、真剣なのが伝わるほどだ。
「何で俺のツラ見てぇのか、ハッキリ言って貰わねぇと受話器ぶった切るぞ」
『話がしてぇんだ。…侑真とじっくり話してぇんだぜ、こっちは』
「……」
曖昧な気持ちだ。
俺は、面と向かって話はしたくない人間だ。後々面倒な事になりかねない。
けど、アイツがここまで律儀に言うなんざ久しぶりだった。
揺らぐ気持ち。俺は、あたしは、どうすればいい?
「…悪ぃ、また今度電話してくれ。今じゃ答えは出せねぇよ」
自然と零れる言葉。これが、今の俺の精一杯の答えだった。
我ながら情けねぇと思う。何故、またアイツの声を求める返事になってしまうのか。
『そうか。ま、いきなり言われちゃ戸惑うよな。…それじゃまたな、侑真』
「悪ぃな、ホントに。……またな、恢斗」
久しぶりの長電話。
久しぶりに、アイツの名を呼んだ。
受話器を置いて、俺は欠伸をした。
アイツの…恢斗の返事、どう返せばいいんだろうか。
少なくとも会話した直後の俺には、何もわからなかった。
----------------------------------あとがき--------------------------------------------
いよいよ侑真の日常も大詰めになってきました。
あと1~2話で完結する予定です。
ちなみに侑真の相棒、恢斗くんは図書館で調べたらいますよ。
相棒である以上、侑真の過去でも彼はとても重要な人物だったりします。
実を言うと、恢斗くんをここのメンバーに交ぜる為の物語でもあるんです(爆
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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