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あのとき、私に何があったのか。
なんでこんなことになってしまったのか。
思い出したいのに思い出せないのが歯がゆかった。
(李緒は幼い頃の記憶を失っているので第三者視点で綴ります。
ですが李緒sideだということを承知の上で閲覧して下さい。凛の話と繋がっています)
幼き頃の李緒は、明るく真面目な「良い子」だった。
「おとうさん、今日も修行したい!」
口癖のように、毎日彼女はそう言った。
その度に李緒の父は「よし、やるか」と張り切って武術を教えていった。
李緒は父の指示を要領よくこなす、まさに「教科書通り」な子供だった。
練習用のサンドバックに、父が指示した位置へ正確な突きや蹴りを入れている。
これにはさすがに父も驚きを隠せなかった。
「李緒、凄いじゃないか」
「えへへっ」
ニッと無邪気に李緒は笑った。
まさかこれが自分の能力だったとは知らずに。
そして、そんな日が続く中。
李緒は小学校から真っ先に帰るとすぐにサンドバックの方へ駆けだした。
父が居なくても、これさえあれば1人でも練習が出来る。
『動く相手が居ると『やりがい』ってヤツがあるんだけどな』
ふと、以前に父が言っていた言葉を思い出す。
「やりがい、かぁ…。でも、相手をやっつけちゃったら意味ないよ…」
李緒は俯きぶつぶつ呟く。
しかしそれは一瞬のこと。すぐにサンドバックに向かい、練習を始めた。
「…はぁっ!」
李緒は何度も何度も突きを繰り出す。
そのとき、誰かに見られているような気がした。
思わず拳を止め、視線のする方へ顔を向けた。
――そこには、自分と年齢があまり変わらない少女がこちらを見ていた。
ランドセルを背負っているから小学生だとわかるが、その割に少し大人びた顔立ちをしている。
「こんにちはっ」
李緒はすかさず笑顔で挨拶をした。それも父から教わっていたから。
少女は、若干驚いたような表情で李緒を見た。
「…あなたも、武術をやっているのね?」
そう言われて、李緒の心に何かが芽生えた。
もしかしたら自分と同じで武術をやっている人かもしれない、と。
「うん、そうだよ!えっと…名前、なんて言うの?」
「水瀬凛。…私も武術をやっているの」
少女…凛は、淡々とその言葉を口にした。
李緒は今までにないほどの喜びを感じた。
「じゃあ同じだね!私、如月李緒って言うの!」
特上の笑みで、李緒は握手をした。
一瞬だけ凛の目が大きく開かれたが、すぐに無表情に戻った。
あ、と李緒は何かを思いついたように呟くと、彼女に向かってこう言った。
「お友達になろうよ、凛ちゃん!」
「え…?」
凛は困惑した表情で李緒を見た。
「いっしょに遊んで、いっしょに練習するの!…たのしそうでしょ?」
『やりがい』というのは、きっとこういうのにあるんだと李緒は思った。
それに、先程からあまり表情が変わらないところを見ると、自分より強そうな気がする。
何か武術のことを教えてくれそうな気もした。
「たのし…そう…」
「うん!それに、1人よりも2人でやるほうが『やりがい』があるんだよ?」
それを聞くと、凛は考え込んだ。
李緒は、答えが出るのを楽しみにしている。
「友達に…なっても、いい?」
恐る恐る凛の口から言葉が出た。
…李緒の答えは、もちろん。
「うん!」
とびっきりの笑顔で李緒は答えた。
李緒には凛という、遊びも修行も出来る友達が出来た。
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※補足:イラストレーターの水瀬凛様とは全く関係ございません。ご了承下さい。